日米の違い 1 [留学記]
◇日米の違い1(高等教育)
研究室にもだいぶ慣れてきたので、ラボの様子や制度について、日本との違いを少しずつ書いていこうかと思います。
今回はアメリカの高等教育制度についてです。
日本の場合(あるいは韓国やヨーロッパもそのようですが)、医学部は大学入試に合格すれば、規定の単位を取得することによりM.D.の学位がもらえます。歯学部もそうです。
アメリカの場合は、多くの専門学部が大学院大学として独立しています。日本の法科大学院のような制度になっていて、大学院を出ないと学位をとれないし、専門職に就くことはできません。
多くの大学は春に卒業し、秋に大学院入学となります。この間にメディカルスクールの場合、MCATと呼ばれる共通試験を受験し、願書を出し、面接を受けて入学許可をもらいます。しかし、メディカルスクールに限らず、アメリカの専門大学院ではテストの点数よりは、小論文と履歴書、推薦状の内容の方が重要視されるらしいです。そのため多くの学生が、一年程度のブランクを空けてこの間にボランティア活動などをします。ギャップイヤーと言います。ボランティアといえば聞こえばよいですが、実際は履歴書磨きと有力者からの推薦状取得と小論のネタ探しです。
私のラボにも多くの学生がギャップイヤーを利用して短期バイトあるいはボランティアをしています。彼/彼女らの希望進路はメディカルスクール、デンタルスクール、薬学スクール、PhDスクールなど様々です。ある人はメディカルスクールを目指しているのですが、推薦状が3通必要だと言っていました。
最近は日本でも大学生に対してボランティア活動等を積極的に薦めていますが、活動実態を客観的に評価する方法がなく、学生が人生の大切な時間を無駄にする恐れがあるのではないかと危惧しています。アメリカは推薦状等でその活動を評価するシステムができているため、学生側にも時間を割くメリットがあると感じています。
(うちのラボでは)ボランティアといっても、我々研究者とほぼ同等の仕事をしているので、彼らの進路を考えると、非常によい経験を積めているのではないでしょうか。日本にも同じような制度があれば、T-SPOTってどんな検査?とはならなかったかもしれません。
さて、もちろんこの制度にもいくつかの批判があります。メディカルスクールの場合最短でも4+4年の8年かかるところを、ギャップイヤーが入ることにより医師免許の取得がさらに遅くなります。外科手術等の手技習得については若いに越したことはないので、年齢を重ねさせる制度はどうかというものです。また、アメリカの大学、大学院の学費は極めて高額で年額600万円程度が標準的です。この出費を回収するために、多くの医学生が、収入のよい整形外科や、ライフワークバランスの取れる眼科、耳鼻科、皮膚科等を志望する傾向が生まれている要因になっているという批判です。個人的な考えですが、社交性のある人が有利になる(であろう)この制度は、患者対応という面からすると理にかなっているのかもしれませんが、実際にはアスペルガー症候群の人のように、社交性という意味では劣るかもしれないが、画像診断や病理診断などの分野では驚くべき才能を発揮する可能性がある人もいるわけです。このような人たちの可能性を排除してしまっている可能性はないのかなと思います。
勿論、勉学も大切です。GPAという学業スコアを高めないと出願すらできない企業もあります。しかし、アメリカがコネ社会であることは否定できない事実だと思います。学生が推薦状3通を要求されるとは驚きました。
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